先日、こんなニュースが。
『大阪府枚方市の遊園地「ひらかたパーク」で7月28日、着ぐるみを着てイベントショーの練習をしていた男性が、熱中症で死亡』
この時期、着ぐるみを連続で着ていられる時間は10分~15分、どれだけ長くても30分が限度ですが、その時間を超えて練習してたんでしょうか、この男性は。
着ぐるみバイトはとにかくこまめな休憩が命です!
実は僕も一日だけ、着ぐるみバイトをやったことがあります。
一日だけとはいえ、僕も立派な経験者。語らせてもらいますよ、その日のことを。
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派遣会社経由で応募
僕はいろんな派遣会社に登録してまして、その内の一つの派遣会社を経由して応募しました。
「遊園地で子供たちの人気者になってみませんか? 日給1万円でガッツリ稼ごう!」みたいな募集タイトルだったはず。
内容は━━
・勤務時間は午前9時~午後6時まで
・休憩は適宜とる。休憩時間も給料発生。
・日給はきっちり1万円
・事前の面接は無し
━━という感じ。拘束時間9時間で日給1万円なので、悪くない。
当時は夏真っ盛りの8月でしたが、バイト当日の天気は曇り。
しかも早朝に中途半端な雨が降ったせいで、湿度が急上昇。むちゃくちゃ蒸し暑かったんです。
そういうことは先に言え
家から現場に向かうまでの間に、すでに汗だくになっていた僕。
現場には僕の他にも、アルバイトさんがたくさん集まってました。
ここで僕、ある違和感を感じたんです。
なんかね、他のアルバイトさんたちがやたらと僕を見てくるんです。
なんか人を憐れむような、これから死刑台への階段を上がる人を見送るような、そんな視線だったんです。
僕にもう少し観察力があれば、この視線の意味にすぐに気づけたはずなんですがね……。
原因はすぐに分かりました。
すぐに現場担当者のおじさんが現れて、簡単なあいさつを交わし、遊園地のスタッフ控え室に入れてもらいました。
その日の流れを簡単に説明して、ぼくらの今日の配置をてきぱきと決めていくおじさん。
聞いてませんそんなこと
ついにおじさんが僕の目の前に来ました。
(どこの配置につくんだろう? どんな着ぐるみを着るんだろう?)とワクワクしていた僕ですが、おじさんの発言は予想外でした。
「君ぃ、ちょっと背が高すぎるな」
「へ?」
混乱する僕。
「着ぐるみはな、あんまり背が高すぎると着にくいんや。体の大きい人は着ぐるみきついぞ」
着ぐるみバイトは身長制限あり
着ぐるみバイトには実は隠れた制約があって、身長が高すぎるのは基本NGなのです。
理想的なのは150センチ~170センチくらいまで。
僕は180センチあるので、その基準を大幅にオーバーしております。
背が低い人がいいならぜんぶ女性でいいじゃんと思うかもしれませんが、着ぐるみはとにかく重く、女性の体力では難しいため、背の低い男性が重宝されるということです。
しかし、僕は言いたい。
それなら事前に言っておけ!
たしかに事前に面接はありませんでしたが、電話で軽い打ち合わせみたいなことはしたんですよ。
その時には、身長のことなんて何も聞かれませんでしたからね。
着ぐるみバイトに応募される方は、身長に注意してください。
ふつうなら事前に身長を聞かれるはずですが、管理体制がいい加減なところだと当日になって初めて聞かれることもあります。
1mmも可愛くない着ぐるみ
身長的に明らかな不適格者だった僕ですが、「なるべく大きい着ぐるみ着てもらうから、安心して」
と担当のおじさんに言われてしまい、まさかそのまま帰るわけにはいかず、そのままバイトを続けることに……。
いよいよ僕が着る着ぐるみを見せてもらうわけですが、ふつう遊園地の着ぐるみといったら↓↓↓みたいなカワイイのをイメージしますよね?
クリックでAmazonページにいっちゃいます。
カワイイキャラクターの着ぐるみを着て、小さな子供たちとワイワイキャピキャピして遊びたい!
それが僕の思い描いていたユートピアでした。
しかし、実際に僕の着た着ぐるみはこんな感じでした。
実際に僕が着た着ぐるみはさすがにもうちょっとカワイく見えるようにデコレーションされてましたが、これと大差ないです。
1mmも可愛くないっ!
なんやこいつ……。僕はこんな怪獣に扮して子供たちと遊ぶのか?
でか、子供怖がって遊んでくれんやろ……。
でも、他に僕の身体にフィットする着ぐるみがないということで、僕の着ぐるみはこれに決定。
着ぐるみバイトは波乱の幕開けとなったのだ……。
異臭地獄
その後、コンパニオン役の女性と二人一組になって、簡単に打ち合わせをしました。
なぜ二人一組かというと━━
そもそも僕一人では着ぐるみを着れないからです。さっきの怪獣の着ぐるみには、背中のジッパーを開けて入るわけですが、誰かにジッパーを閉めてもらわないとだめなんです。
それに、やんちゃな子供たちに取り囲まれて殴る蹴るの暴行を受けた場合、子供を引き離すために、コンパニオンは必ず必要になるので、二人一組というわけです。
女性は何度もこのバイトをやってるらしく、「熱中症には気をつけてね」と繰り返してました。
それと「着ぐるみの中に入っている間に耐えられないほど気分が悪くなった場合は、左手だけを振って私に知らせて」と言ってました。
なるほど、着ぐるみの中にいる間は絶対に声が出せないから、無言の合図で伝えるしかないわけですね
ということで、例の怪獣の着ぐるみに入ったわけですが━━
とにかく臭い! 汗臭い!
前々回に着ぐるみを着た人の汗の上に、前回に着た人の汗が上塗りされて、汗が何重にもなって浸み込んでいるんです!
剣道をするときにつける面のようなひどい臭いがします。
剣道をやったことがある人にはわかるはず。
ちょっと本当に吐きそうなくらい臭かった。
洗濯しとけよって話ですけどね。
でも、相方の女性は「ファイト♪」と言って、着ぐるみのジッパーを閉めてしまった。
最初の数分はマジで吐きそうでした。
でも、しばらくすると、鼻が慣れてきたのかあまり気にならなくなりました。
人間ってどんな地獄にも慣れる生き物らしい。
焦熱地獄
僕が配置されたのは、グッズ販売店のそばです。
子供と保護者がたくさんいました。
スタッフ控室からそこまで歩くだけでえらく大変でした。
着ぐるみって極端に視界が狭いです。ぜんぜん見えません。
しかも僕の場合、身体に比べて着ぐるみが小さかったので、のぞき穴がぜんぜん目の前にこないんです。だからほとんど見えない。
自分の足元が少し見えるだけという、ほぼ全盲の状態でした。
相方の女性に手を引っ張ってもらって、なんとか歩けるレベルです。
ここまででまだ5分くらいしか経ってませんが、すでにくそ暑い!
しかもその日は湿度が高かったので、汗ダラダラ。
着ぐるみの中はサウナのような焦熱地獄。
子供がやんちゃすぎ
しかも子供たちがあっという間にまとわりついてくる(怪獣に怖がって子供が逃げていくのではないか、という僕の甘い予想は外れた)。
中にはボカスカ殴ってくる子もいて、その相手をしているだけで著しく体力を消耗します。
着ぐるみはたぶん8キロくらいの重さがあります。
だからとにかく疲れる……。
しかも!
着ぐるみのサイズが小さすぎるので、どうしても猫背になってしまい、後半は腰が痛くなりました。
さっきも書きましたが、体の大きい人は着ぐるみバイト、向いてないです。
やめといたほうがいい。
体壊しちゃうよ。
時間としては、20分着ぐるみやって40分休憩です。
なので、拘束時間は9時間ですが、実働時間はかなり少ないです。
休憩時間は控え室に戻って、水分補給。後はスマホいじってるだけ。
慣れてきたら、休憩時間中に資格勉強なんかもできるのでは?
体力に自信のある人ならおいしいバイトかも!
子供のお相手はきつい
20分ごとに40分の休憩をとったので、熱中症の心配はありませんでした。
でも、着ぐるみを着る20分は正直地獄。
着ぐるみで子供の相手をするのが、ここまで重労働だとは……。
子供は遠慮という言葉を知りません。
全力で殴る蹴るの暴行を加えてくるし、そこに女の子も加わってきます。
女の子に全力で合法的に殴られる経験ってレアですよ。(何言ってんだこいつ)
たまーにですが、「おい中に誰か入ってんだろ? 出て来いよ」と挑発してくる子供もいて驚いた。
まさか声を出すわけにはいかないので、僕は無言で首を振って否定するしかない。
夢なさすぎだろ、この子供。
面白いなと思ったのは、この年代の子供ってあんまり男女差がないんですよね。
男の子も女の子も同じくらいわんぱくだし、女の子だからっておしとやかにしておきなさいみたいな社会的圧力があんまりない。
そういえば、小学生までは男女混じって平気で遊んでましたよね。
なぜか中学くらいになると、男女間に壁ができはじめるわけですが……。
このバイトは大変でした。でも子供たちの無邪気な笑顔を見てると癒されましたね(着ぐるみだからほとんど見えてないんですが)。
バイト終了
午後も全く同じローテーションで仕事してました。
着ぐるみの中に入っていた時間を合計すると、2時間ちょいです。
拘束時間が9時間なので、着ぐるみに入っている時間はだいぶ少ないですね。これで日給1万円なので美味しいバイトと言えるかも。
ただ、着ぐるみに入ってる2時間はかなりの地獄です。
まとめ
結論!
体力に自信があり、かつ身体の小さい男性ならこの仕事はいいかもです!
身体がデカい人は向いてません。
実働時間は少ないので、その点はグッド。
ただ、熱中症だけは気をつけて!
僕の場合は、しっかり休憩を取らせてもらいましたが、中には劣悪な労働環境のところもあるはず。
熱中症にならないためには、こまめな休憩が命!
着ぐるみ着たまま死んだんじゃ、浮かばれません。
子供の夢も壊してしまいます。
これから着ぐるみバイトをする方は、どうかこの点にお気をつけて!