運営者情報

【全集読んだ俺が決める】筒井康隆おすすめ小説コンプリート版

筒井康隆は、僕が高校生の頃から愛読している作家です。

筒井康隆全集は、何度も読み返してました(何度読み返してもおもしろいんだ、これが)。

筒井康隆 全集

人生で大切なことはすべて筒井康隆に学んだ僕が、筒井康隆おすすめ小説ランキングを発表します!

筒井康隆は作家ではない

筒井康隆は30歳で小説家でビューしました。

元々の夢は役者だったそうですが、「小説でも演じることはできるはずだ」という思考転換を経て、作家になります。

彼いわく「小説家という役を演じている」のだそうで、筒井康隆の本性は作家というより役者だと言えますね。

筒井康隆の作品は大きく3つのカテゴリーに分かれます。

・「ドタバタギャグコメディ」

(『大いなる助走』『ビアンカ・オーバースタディ』など)
 
・「叙情的で甘酸っぱい小説 」
(『時をかける少女』『旅のラゴス』『わたしのグランパ』など)
 
・「実験小説 」
(『虚人たち』『残像に口紅を』『虚航船団』など)

とりあえず筒井康隆を体験してみたい人は、いちばんおもしろい「ドタバタギャグコメディ」の小説から入るといいでしょう。

【長編】20位〜11位

20位〜11位までは筒井康隆をより深く読みたい人向けです。

20位 朝のガスパール

実はこれ、読者参加型の小説なんです。

つまり、

読者の感想によって、物語の展開が変わる

──という、実験的な小説なのです。

この小説は、新聞で1日1話ずつ連載されていたそうで、
その日その日に読者から寄せられた感想を著者が読み、それに応じて明日のストーリーを変えていくという、びっくりな手法を使っているんです。

毎日毎日、読者からの無茶振りに応えて物語を変化させていくわけですから、これはおもしろそうですよね。

 

ただ、やっぱり途中で破綻してしまったせいか、物語としては意味わからん感じになっています。
(突如として、登場人物の大半が死んでしまったのには、驚きました。)

19位 虚航船団

文房具を主人公にした宇宙戦争を描いたストーリー。

分度器や消しゴム、下敷きなどが、あたかも人格を持った登場人物のように出てきます。

 

これはねえ、かなりぶっ飛んだ実験的な小説なので、相当に頭が柔らかくないと読めないっす。

「分度器は杓子定規な性格」みたいに、文房具によってキャラが違うのがおもしろい。

あと、消しゴムが「同性愛者であり、自分を天皇だと思い込んでいる」

──というのは何かの暗喩なのか?怖い怖い。

 
筒井康隆は初期の小説やエッセイだと、わりと天皇をディスってます。

18位 驚愕の曠野

いきなり第332巻から始まるという変わった小説。

物語が連続して続いていくのですが、物語の語り手がいつの間にか物語内の登場人物となり、そして登場人物として死んでいく……。

──という「物語」そのものをメタフィクション的に追求した作品です。

 

難しすぎて、ぜったい一般受けしない小説です。。。
「ホラー小説として前人未到の境地にたどり着いた作品」との評価もありますが、

これをホラー小説として読むには、かなり難易度が高い気がします……。

17位 ロートレック荘事件

ちょっとした叙述トリック的な感じなので、「だまされたわ」とは思いましたが……。

トリックのためのトリックみたいな感じがして、俺はあまり好きではありませんね。

 
良くも悪くも、深みがない推理小説です。

筒井康隆の数少ない推理小説の中では、傑作という評価ではありますが……。

16位 わたしのグランパ

刑務所から出所してきためぐるドタバタ劇を通して、少女が成長していくというストーリー。

『時をかける少女』的な爽快感はあるものの、とがったところのないジュブナイル小説という感じで、僕としてはそんなに楽しめなかった。

 
毒が足りないですね。

15位 銀齢の果て

70歳以上の国民に殺し合いをさせる「老人相互処刑制度」(シルバー・バトル)が開始された!

長生きは悪なのか……?

バトル・ロワイアルの老人バージョンですね。

 

老人同士が本気で殺し合いをしていく描写が、滑稽でおもしろい。

てか、老人、殺し合いできるくらい元気なんかい。

14位 モナドの領域

筒井康隆のおそらく最後の長編です。

死体バラバラ事件を冒頭に置き、徐々に「神は存在するのかしないのか」という、神学論的なストーリーになっていきます。

詳しいことは忘れちゃったんですが、ラストあたりで、神をたった一言で定義している文章が出てくるんですよね。

それに感動した記憶があるんですが、メモを紛失したのでわからなくなっちゃいました。

誰か読んだら教えてください。。。

13位 おれの血は他人の血

冒頭から、ヤクザを素手で返り討ちにしてしまうというびっくりなシーンから始まるハードボイルドストーリーです。

主人公はちょっとサイコパス的で、自分の痛みになど頓着せず、「おれの血は他人の血」と思っているのです。

サイコパス小説として読めば、意外とおもしろいかもしれません。

12位 富豪刑事

筒井康隆には珍しいシリーズものの推理小説。

難事件の解決に、惜しみなく大金を投じる世間離れした刑事が主人公です。

 

ふつうは解決不可能の事件を、金にものを言わせて解決してしまうジョーク的推理小説ですが、

トリック自体はけっこうしっかりしているので、推理小説として十分楽しめます。

深キョン主演でドラマ化もされています。

ちなみに、原作の主人公は男でしたが、ドラマでは女性(深キョン)に変更されています。

そりゃまあ、深キョンの方が華があるしね……。

11位 文学部唯野教授

大学の文学部を舞台に、唯野(ただの)教授の文学講義を受けられる小説です。

作中では、大学内部の硬直した組織設計を暗に批判するブラックジョークもあって、出版当時、大学関係者の間で話題になったそうです。

 
目次を紹介すると、

・印象批評

・新批評

・ロシア・フォルマリズム

・現象学

・解釈学

・受容理論

・記号論

・構造主義

・ポスト構造主義

──となっています。

文学部の人ならわかるかな?

小説ではありますが、けっこう専門的なことが書かれているので、読むにはちょっと覚悟がいるかも。

 

そういえば、僕の大学の文学部には必読文献リストとしてこの本が載ってました。

10位〜4位

10位〜4位は、僕個人的にかなり感動した小説ばかりです。

10位 虚人たち

小説って、必ず場面が省略されていますよね。

たとえば、

登場人物がトイレをするシーンを、毎回いちいち細かく書いている小説なんてありません。 移動シーンも省略されがちですし、セックスシーンを省略することもよくあります。

そこで、筒井康隆は考えた。

「もし、小説を省略せずに書いたらどうなるんだろう?」

そして生まれたのが、この小説。

細かいことまで省略せずに書かれているので、正直かなり読みづらい。

おすすめなんだけど、おすすめできない作品です……。

しかし、これを読み終えたあなたは気づくはず。

「日ごろなにげなく過ごしている日常を文字にすると、こんなにも情報量が多いなんて!」──と。

世界にも例がない実験的な作品です。

 

読むか読まないかはあなた次第。

9位 愛のひだりがわ

少女の成長をえがくジュブナイル小説。

時をかける少女の姉妹版ですね。

犬と会話をできる超能力を備えた少女が、仲良しの大型犬を連れて、無法地帯をかけめぐって成長していくストーリーです。

その大型犬と少女は会話ができるので、コンビネーションはばつぐん。
二人三脚(?)で危機を乗り越えていきます。

 
僕がすごいな、と思ったのはラストのオチ。

「マジかよ」と思いましたね。

「成長するとは、なにかを失うことである」

──僕はこの小説でそれを学びました。

あ、ちなみに大型犬が殺されてしまうとか、そんな安易なオチではありませんよ!

もっともっと悲しいラストです。

8位 敵

妻に先立たれて、ひとりぼっちになった老人を淡々と描く小説です。

これがねえ、怖いんですよ。
老人の孤独さっていうかなんていうか……。

 

主人公の老人は世間との付き合いはけっこうあって、パーティーに行ったりもするんですが、

彼の生活にはすでに「社会を支える労働力になれなくなったという喪失感」が、みなぎっているんです。

老人は、誰しもこんな喪失感があるのかも

そして、最後まで読んでもタイトルの「敵」とは誰のことなのか分からない。

老人にとっての敵とは、世間?若者?自分自身?それとも、自分を残して先に死んでしまった妻?

僕は20歳くらいでこの小説を読みましたが、それが分からなかった。他の人の感想を聞いてみたいものです。

そして、ラストシーンは、怖いです。

最近はけっこう「孤独はすばらしい」みたいな風潮がありますが、老人の孤独は本当にすばらしいのかどうか怪しいぞ……。

ラストシーンのヒントを出しておくと、

「死都死都死都死都」です。

なんの呪文ですかって思いますが、読めばわかりますよ。

外国語に翻訳不能、日本語でしか読めない孤独の怖さをお楽しみあれ。

7位 残像に口紅を

最近、カズレーザーさんの紹介で有名になった小説ですね。

 
少しずつ文字が消えていく世界。「あ」が消えれば、「愛」も消える。

「ら」が消えれば、「ラーメン」が消え、「か」が消えれば、「蚊」も消える。

メモ
「文字落としの小説」と呼ぶそうです。

ついには、娘の名前の一部が消えてしまい、娘の存在そのものも消えてしまう。

消えた娘の残像に、主人公はそっと口紅をさしてやる。

それが、タイトルの由来です。

この小説は、差別語の検閲が厳しくなって、思うように文章を書けなくなってきた作家の苦境を描いているのだ、とする都市伝説もあります。

あなたはどう読まれるだろうか?

6位 ビアンカ・オーバースタディ

筒井康隆初のラノベ小説です

ウニの生殖の研究をする超絶美少女が、ちょっと危険な生物学の実験研究にのめりこむ。

「男子のあそこってどういう仕組みになってるの?」という純粋な好奇心から、男子への突撃実験を開始していくという流れの小説です。

メモ
overstudy 〜を勉強しすぎる

ま、この小説はわざわざ詳しく語らなくても……わかるよね?

5位 大いなる助走

直木賞に落選した作家が、逆恨みで選考委員を殺していくという大虐殺ストーリー。

文壇について茶化したり馬鹿にしたりするような描写がたくさんあるので、他の小説家を敵に回してしまったといういわくつきの小説です。

メモ
松本清張がこの小説にブチ切れたのは有名な話
「まさか、自分の書いた小説が落とされたくらいで、逆恨みで何人も人を殺すなんてありえないよね」

最近まで、僕はずっとそう思ってました。

でも最近は、そういう理由で殺人がふつうに起きるようになっている気がしますね。
 
どんどん現実が小説に追いついてくる時代なんでしょうか。

4位 48億の妄想

街中のいたるところに設置されたカメラにかっこよく自分を映すために、あらゆる人間がドラマの中の登場人物のように振る舞いつづける近未来を描いたSF小説。

「え、現代社会と同じじゃん」って思いませんか。

まさに48億総youtuberですね!

僕たちが、youtubeやインスタグラム、tiktokなどで、いつもより自分をカッコよく見せようと努力しているのは、公然の事実。

 
この小説に出てくる人たちも、カメラにカッコよく映ろうと、素の自分ではない何者かを演じているのです。
それも48億人みんなが。

動画の時代を見事に予言したSF小説です。

ベスト3

忙しいあなたは、ぜひこの3つだけでも読んでほしい。

3位 家族八景

(七瀬シリーズ1作目)

主人公の七瀬は、人の心を読めてしまう精神感応能力者(テレパス)の女性。

七瀬のなにが大変かっていうと、恋愛ができないんですよ。

だって、男の考えが読めてしまうから。
男が汚い欲望を抱いているのをすぐに感知してしまうから。

男なら分かるでしょうが、美人を見たら頭の片隅でその人の裸を想像したりするものですよね。

七瀬は、そんな男の隠れた想像を瞬時に読み取ってしまうという、ある種気の毒な超能力をもっているのです。

 

『家族八景』では、七瀬がお手伝いさんとして(家政婦のミタ的な感じ)他人の家を転々とします。

相手が家族となると、内心でかなり鬱屈した思いを抱えていますよね。

父が出来の悪い息子に抱いているのは無関心か、劣等感か。
妻が夫に抱いているのは愛か、殺意か。

──そういう心の奥底の思いが、七瀬にはすべて読み取れてしまうんですね。

 
正直、『家族八景』は家庭内ホラー小説でもあります。

続編として『七瀬ふたたび』、『エディプスの恋人』がありますが、まず読むべきは『家族八景』です。

 
七瀬シリーズは全三部作になっています。

実は七瀬シリーズ三部作は、それぞれ舞台が決まっています。

・『家族八景』=家庭

・『七瀬ふたたび』=国家

・『エディプスの恋人』=宇宙

──という感じで、シリーズが進むごとに舞台スケールが大きくなっていきます。

テレパス超能力者が、家庭内で暗躍し、国家に立ち向かい、最後には宇宙に挑戦するという三段構成になっているのです。

特に3作目の『エディプスの恋人』では、宇宙意思とか、宇宙を統べる全治全能の神?が出てきたりと、1作目とはかなり違うトーンの物語です。

しかもその神が女性なんですよ。

実は最近、文明が女性化していると言われていて、そのへんのことにも触れられています。

(七瀬シリーズ2作目)

(七瀬シリーズ3作目)

2位 旅のラゴス

個人的に、ジブリに映画化してもらいたい作品No. 1なんですが、残念ながら、ジブリどころか映像化さえされてませんね。

世界観としては、天空の城ラピュタやハウルの動く城に近いです!

現在の文明が崩壊した未来? を1人の男が旅するというストーリーです。

ただ、旅先で会う人はみんな一期一会です。

女性と親しくなっても、ラゴスは「俺は次の旅に出かけないといけない」と言って、女性を置いてこっそり旅に出てしまいます。

ラゴスにとっては、「恋愛<旅」なのです。

このへんは、恋愛よりも趣味を大事にしがちな最近の?若者に近いのかもしれません。

 
決して定住せず、渡り鳥のように各地を転々と旅するラゴスに共感する人は多いはず。

自分の所属するコミュニティ(会社や職場、家族など)に息苦しさを感じた時には、これを読みましょう。

ぜんぶ捨てて旅をしたって、いいんですよ。

『ラゴスの旅』じゃなくて、『旅のラゴス』になっているのが、いいよね。

 
⬇︎⬇︎⬇︎『旅のラゴス』をヒントに、転職について書きました。

【作家に学ぶ】イヤになったら仕事を辞めてもいい理由

1位 霊長類南へ

だいぶ昔の作品で、これをランキング上位に持ってくる人は少ないと思いますが、僕は大好きな作品。

ひょんなことで、世界最終核戦争が起こってしまい、地球上がどんどん放射能で汚染されていく様子を描くパニック小説。

人間1人1人は賢いのですが、群集になると衆愚になってしまう様子がおもしろい。

 
人類で最後に生き残った男が、「nonsense…」とつぶやいて死んでいくシーンが好きです。

そして、この小説のラストシーンなんですが、これがうまいんですよ。

ネタバレではないと思うので言いますが、ラストシーンに登場するのはゴキブリです。

しぶとい生命力で人間よりもはるかに長い歴史を生きてきたあのゴキブリでさえ、放射能の脅威には勝てずに死んでいくのです。

人類の大先輩であるゴキブリの死に様を、ぜひ読んでみてください。

個人的に、世界の終末を描いた小説が大好きなので、この小説が1位です。

【短編】10位〜4位

筒井康隆の名短編も紹介しておきましょう。

多すぎて選べないので、10作だけ。
(『時をかける少女』は入れてません。有名すぎるしね……。)

10位 佇むひと

ある日、ちょっとした社会批判をした妻が政府にとらわれて「人柱」にされてしまうというストーリー。

メモ
「人柱」とは、人間を木に同化させてしまう架空の刑罰のことです。

道ばたで次第に木に変わりゆく妻を、夫が見舞いに行くのですが、

すでに妻は木になりかけていて、痛みも分からなくなっていました。

ほとんど木になった妻に、夫が最後の別れを告げるシーンが最高に叙情的で、リリカルで、泣けます。

9位 懲戒の部屋

通勤電車で痴漢にまちがわれたサラリーマンが、否応なしに女性たちから追及を受け、

最終的に女性たちの手によって、私刑に処されるという不条理な短編。

 

たしかに男からするとホラーなのですが、もう一つ怖いのは「本当に男が痴漢をしたのかどうか」が、描写からはよく分からないというところ。

男の内面描写では、「やってない、やってない」と書かれていますが、それも男が必死に自分を暗示にかけているだけかもしれない。

結局、真相は謎ですが、「疑わしきは罰する」という名の下に、あわれなサラリーマンは最後に「処刑」されます。

8位 日本以外全部沈没

小松左京の最大のヒット小説である『日本沈没』をパロディー化した短編です。

『日本沈没』は全2巻の大長編でしたが、筒井康隆はたった数十ページの短編で、しかも日本以外のすべての国を沈没させてしまいました。

 

世界でたった一つ残った陸である日本に、世界中の人が殺到する様子をドタバタで描いています。

いくら、おもてなしの国でも、70億人の世界人口はもてなせませんわなぁ……。

7位 にぎやかな未来

まさに今の時代を予言した短編です。

ちょっとyoutubeで動画を見ればすぐにやかましい広告が流れ、道を歩いていてもあらゆる店から広告メロディーが流れてくるのが、今の時代ですよね。(「ほんーをうーるなら、ブックオフ!」とか)

 

そんな広告だらけの「にぎやかな」世界が行き着く先を描いた、SF短編です。

とくにラスト一行の文章は、かならず一本取られるので必読。

6位 熊の木本線

(熊の木本線は、⬆︎⬆︎⬆︎の本に収録されています。)

とある集落の宴会に飛び入りで参加することになった主人公が、まちがえて「忌み歌」を歌ってしまうというストーリー。

その集落には、代々「忌み歌」(歌うと日本に天変地異が起こる)が伝わっていて、それを部外者である主人公がつい歌ってしまうんですね。

今まで盛り上がっていたのに、一瞬で場の空気がヒエヒエになって、全員の目線が主人公に注がれるシーンは視線恐怖症でなくても怖い。

 

「忌み歌」を歌った結果、日本にどんな天変地異が起こるのか?

今後、日本でなにか大災害が起こったら、この主人公のせいです。

5位 最後の喫煙者

禁煙ファシズムが盛り上がり、「喫煙者=人間ではない」という公式が確立された世界。

喫煙者がどんどん迫害されていっても、主人公は意地でもタバコをやめない。

「それでもオレは吸い続ける」

そんな主人公は「最後の喫煙者」になってしまいました。

 

最後の喫煙者は果たして、タバコ文化を後世に残すことができるのか……。

4位 乗越駅の刑罰

(『乗越駅の刑罰』は⬆︎⬆︎⬆︎の本に収録されています。)

里帰りした主人公が、人気のないさびれた駅の改札を通過しようとすると、駅員に咎められ、あろうことか無賃乗車の疑いまでかけられ、最終的にボコボコにされるという不条理な短編。

なんの理由もないのに、次から次へと罪を着せられるのは、まるでカフカの『審判』のような不条理感がありますね。

まさに「カフカエスク」的な短編。

罪というのは、実体がなくても着せることが可能です。

ちょっと気に入らないことがあると、簡単に他人に罪をかぶせることのできる世界……。ああ、恐ろしい。

筒井康隆の短編で、いちばんキレたくなる短編です。

ベスト3

筒井康隆、傑作短編のベスト3です。決めるの悩みましたよー。

3位 母子像

(『母子像』は⬆︎⬆︎⬆︎の本に収録されています)

ある日、妻と子供が異空間に消えてしまうというホラー短編です。

短編なので、あらすじを言うとかなりネタバレになるのですが、母と子供が異空間に「半分」飲みこまれてしまうという超自然的ホラーです。

 
個人的には筒井康隆最恐のホラー小説ですね。

これ以上に怖い小説はない。

2位 おれに関する噂

平凡な市民である男が、突然、有名人としてマスコミに追われ始めるという奇妙な短編。

有名人でもないのに、「〇〇さん、銀座にあらわれる!」「〇〇さん、ついに初の恋人か?」「あわれ、フラれてしまった〇〇さんの気持ちは?」

──こんなしょーもないことを、延々と報道されるんですね。

 
行く先々に、大量のマスコミがウヨウヨしており、部屋にまで突入してこようとするのだから、もはやプライバシーもへちまもない。

こういうこと、現実にもよく起こっていますよね。

たとえば、眞子さまが婚約するにあたって、ただの一般人である小室圭さんをマスコミが追い回し始めたのも、まさにこの短編の構図と同じです。

マスコミの暴走を予言した短編と言えるかもしれませんね。

1位 夢の検閲官

子供を亡くした母親が主人公の短編ですが、実は裏の主人公は、彼女の心の中にいる夢の検閲官たちです。

メモ
夢の検閲官たちは、彼女にどんな夢を見せるべきか、また、見せるべきでないかを決めている人(?)たちです。

子供を亡くしてからまだ日がたっていない時には、子供の夢を見せず、代わりにメロンの夢を見せたりして彼女をごまかします。

亡くしたこどもをそのまま夢に登場させると、彼女の精神がやばいことになりかねないからです。

そんな夢の検閲官たちですが、最終的に亡くした子供を彼女の夢に登場させることを決断します。

 

大切な人を亡くしたとき、なぜかかなり後になってから、その人が夢に現れるということがありますよね。
(夏目漱石の『夢十夜』みたいに)

もしかしたらそれは、僕らの精神を心配してくれている夢の検閲官たちがしてくれたことなのかもしれませんね。

これは余談ですが、大江健三郎の奥さんはこの短編を読んだことがきっかけで、筒井康隆の作品が好きになったそうです。

おすすめエッセイ3選

エッセイは3冊だけ厳選しました。

創作の極意と掟

筒井康隆は50年以上も作家をやっているのに、小説の創作作法について細かく書いたのは本書だけです。

ただ、50年以上の作家生活を経て蓄積されたノウハウが、みっちり詰まっている神本です。

 

筒井康隆は、本書でこう断言します。

小説というものは、言うまでもなく、何を、どのように書いても良い自由な文学形式なのだ。

バージニア・ウルフにまでさかのぼる「意識の流れ」の考察という、純文学的な記載もあれば、

語尾は「た」がいいのか、「だった」がいいのか、というような実務的な文章作法に関する記述もあります。

純文学からエンタメまで、広くカバーしています。

僕は特に小説家を目指しているわけではないのですが、こんなブログを書いている以上、一応「モノを書く人間」です。

「モノを書く人間」にとって、これは文章作法の決定本です。

この本だけは捨てられません。

笑犬楼よりの眺望

筒井康隆の切れ味鋭いエッセイ集です。

「喫煙者差別に一言申す」とか「フェミニズムをめぐる男女の本音」とか、かなりセンシティブな内容も、正面突破している痛快な本です。

 
だいたいにおいて、筒井康隆のエッセイはふざけたものが多いです。(たとえば『腹立半分日記』は、筒井康隆の周囲の人間を実名で登場させたエッセイ)

しかし、この本の最後に収録されている『断筆宣言』では、マジの筒井康隆が見れます。

メモ
実は筒井康隆は、1993年、短編『無人警察』の作中の「てんかん」に関する記述が差別的だとして、日本てんかん協会から抗議を受けたのです。

その後のゴタゴタもあって、筒井康隆は「言葉狩りが小説狩りに移行しつつある」と述べ、

そんな社会への抗議の意味もこめて断筆(小説やエッセイを一切書かないこと)します。

ちなみに、3年後に断筆は解除されます。今も筒井康隆の新しい作品が読めるのは嬉しいですね。

この断筆宣言が本書に収録されています。

作家が全身全霊をかけて書いた、日本社会への抗議文。

大いに読む価値があるので、ぜひ。

現代語裏辞典

これはエッセイと言っていいのかわかりませんが、1万2000語にわたる日本語を斜め上からの解釈でぶった切った本です。

たとえば、

【愛】すべて自分に向ける感情。他へはおすそ分け。

【小説家】大説家と中説家は絶滅し、今や小説家しか残っていない。

【災害】自衛隊が悪く言われない理由。

【印税】税と名のつくもので、唯一喜ばしき税。

こんな感じで、延々と1万2000語にわたる、ちょっとふざけた(?)解釈がのっています。

いわば、「辞典」をパロディー化した作品ですね。

本物の辞典並みの分厚さですが、大喜利的なおもしろさがあるので、読んでみるとおもしろいですよ。
Twitterで本書に書いてあることをつぶやけば、バズるかも。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です