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『天気の子』のルーツはラテンアメリカ!?ネタバレレビュー

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見てきました。新海誠最新作の『天気の子』

前作の『君の名は』が3年前。前作が異常なほどの大ヒットになったので、ハードルが上がりに上がりまくっている新海監督。

この高すぎるハードルを越えるには、巨大なジャンプ台が必要だろうと思っていたのだが、新海監督はうまくジャンプしてハードルを越えましたね。

 

100%楽しめるアニメでした!

 

個人的にいろいろ気づいたことがあるので以下に書いてみます。

おそらく他の人とは違う考察をしているので、一風変わったレビューを読んでみたい方はぜひ!

 

あらすじ

「あの光の中に、行ってみたかった」

高1の夏。離島から家出し、東京にやってきた帆高。
しかし生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、
怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。
彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。
そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は一人の少女に出会う。
ある事情を抱え、弟とふたりで明るくたくましく暮らすその少女・陽菜。
彼女には、不思議な能力があった。

https://tenkinoko.com/      HPより引用 

 

「タイタニック効果」を意識した二部構成

「タイタニック効果」? 意味わかんないですよね、すみません。説明させてください。

 

『タイタニック』のストーリーといえば、分かりやすい二部構成になってますよね。

前半はボーイミーツガールの恋愛物語。

後半は打って変わって、沈みゆく豪華客船から逃げ惑う乗客たちを描いたパニック映画的な物語。

  

前作『君の名は。』でも、前半は入れ替わりという異常事態が発生するものの、基本的には瀧くんと三葉の平和な日常生活が描かれる。

それに対して後半は、タイムスリップした瀧くんが、彗星が衝突する前に住民を避難させるという、ハラハラする怒涛の展開となっている。

後半では彗星の衝突シーンもあるし、前半の日常感とはまったく別物のパニックストーリーになる。

 

この二部構成は、今作の『天気の子』でもそのまま引き継がれていますね。

前半は東京に出てきた家出少年が、苦労しながらオカルト雑誌のライターとして活躍する様子を描いている。

ピストルを拾うという非日常感はあるものの、基本的には日常の描写が中心です。

それが後半ではがらっと変わります。

警察との追跡劇もあるし、東京が長すぎる雨のせいで沈んでいったり、落雷が落ちてトラックが爆発したりと、後半はまるでSFパニック映画のよう。

 

前半は平和な日常を描いて、後半のカタストロフでそれを破壊するというのは、エンターテインメント映画の王道でもあるのかもしれない。

2時間の長編映画だと、最初から最後まで派手なシーンの連続ってわけにはいきませんからね。

この二部構成が、最も効果的な物語の定型みたいなものなのかも……。

 

帆高くんのお気に入り小説「キャッチャー・イン・ザ・ライ」

主人公の帆高(ほだか)くんは家出少年なわけだが、どうやら一冊だけお気に入りの本を東京に持ってきたらしい。

それが『キャッチャー・イン・ザ・ライ』。 

 

最新の翻訳は村上春樹訳です。
てかあの村上春樹が翻訳してしまうと、次の人翻訳しづらいよね…
 

これはアメリカの古典小説で、思春期の青年の揺れる心を忠実に生け捕りにした青春文学。

この小説の主人公は大人を信じることができず、徹底して大人たちに反抗する青年なのだ。

 

おや。『天気の子』の帆高くんと、境遇が似てますね。

帆高くんも東京に身一つでやってきたものの、悪い大人たちにぼろぼろにされます。

帆高くんは映画の最後まで、大人に対する不信を拭いきれないようでした。

その大人不信は、帆高くんの持つピストルに象徴されている。

力では大人に敵わないが、引き金を引く指の力さえあれば大人を打倒することができる。

そんなピストルの魔力に、帆高くんはずっと捕らわれていた。

 

『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の本は作中で何度も出てくるので、見落とした人はあまりいないと思います。

これは新海監督の分かりやすいメッセージなんでしょうね。

「これはキャッチャー・イン・ザ・ライをモチーフにした、少年の少年による少年のための物語なんだ」という監督の叫びが、僕の耳には聞こえてきました。

止むことのない長い雨といえば、あの古典小説『百年の孤独』だ!

読書界の有名作品のひとつに、ラテンアメリカ小説の『百年の孤独』という名作があります。

 

これは架空の村マコンドを舞台にした小説で、日常とファンタジーが融合したような不思議な作品です。

よくマジック・リアリズムの代表作と言われています。

 

マジック・リアリズムというのは、当たり前の日常とありえない非日常を融合させて、さも現実であるかのように描く小説のことです。

 

たとえば、『百年の孤独』には登場人物がいきなり何の前触れもなく、空飛ぶ絨毯で飛んで行ってしまうシーンがあります。

そんな風にありえないはずの描写が満載なわけです。

その中に数年間も村に雨が降り続くというシーンがあって、これが『天気の子』の東京の状況とそっくりなんです。

以下は、『百年の孤独』からの引用です。

 

がドアから奥へ入り込んであちこちの部屋を泳ぎまわり、窓から外へ抜けられるくらい、空気は水を含んでいた

 

ほら! この小説にも「魚」が出てくるんですよ!

『天気の子』にも出てきましたよね。空から降ってくる「魚」のような生物が。

共通点が多い!

日常とファンタジーが融合している点でも、『百年の孤独』と『天気の子』はそっくりです。

 

今すぐ新海監督に聞いてみたい━━

『百年の孤独』を呼んだことがありますか?と。

新海監督は文学部出身のようだし、学生時代は小説をたくさん読んでいたのではないだろうか。

 

実は『天気の子』には、登場人物たちの本棚がたくさん出てくる。

そこにはいろんなタイトルの本が並んでいるのだが、映るのは一瞬だけなのでとても確認しきれない。

もしかしたら、『百年の孤独』もどこかの本棚に映っていたのかも。

 

それを確認するだけのために、もう一度『天気の子』を見に行こうかと本気で迷っているのが僕です……(笑)。

リーゼント刑事の謎と立体的な花火の美しさ

ここまで書いてきましたが、もちろん不満な点はいくつかあったんです。

特にラストあたりの警察は、新海監督の都合に振り回されるだけの無能警察24時だったし、非力な少女が体当たりしただけでごつい体格の警官が吹っ飛ばされたりというご都合主義的展開が目立ちました。

 

とにかく謎のリーゼント刑事をはじめとする警察の無能っぷりがすごい。

リーゼントが何かの伏線なのかと思ったら、別になんでもなかったし。

 

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リーゼントが気になってストーリーに集中できません 予告編より

 

しかし、そんな欠点を補ってあまりあるのが新海監督の美しい絵の魅力なのです。

特によかったのが、花火が立体的に映るあのシーン。

僕らが地上から花火を見るときって、平面的にしか見えないけど、あのシーンの花火はそれが立体的に見えて神々しいまでの美しさなんです!

 

ぜひみなさんもあのシーンを見に行って、精神を浄化されちゃってください。

まとめ 

新海誠はジャンプし続ける

前作、『君の名は。』の大ヒットで恐ろしいほどハードルが上がった今回の映画でしたが、僕は大満足です。

むしろ『君の名は。』より好き。

 

新海監督は、前作が大成功したことによるプレッシャーをまったく感じさせませんでした。

新海監督は自分で上げたハードルを越えるため、さらに大きいジャンプ台を作り、見事に高いハードルを飛び越えました。

 数年先になるであろう次回作でも、新海監督はジャンプし続けるでしょう。

 

ラストも単なるこじつけハッピーエンドにしなかったところが良かったです。

『君の名は。』ほどスッキリしたエンディングではないので、賛否両論別れそうですけどね……。

さて、明日は晴れるといいですね。

 

小説版のレビューはこちら!

www.sumo-pula.com