Small+α すもぷら

昨日までの自分に小さな+αを足していくブログ

『千と千尋の神隠し』に似ている? スピルバーグ『太陽の帝国』ネタバレレビュー

f:id:pineapple-bomb:20190803161111j:plain

子供が主人公の戦争映画です。

 監督はあのスピルバーグ!

 『E.T.』や『インディー・ジョーンズ』などの子供向け娯楽映画ばかりが彼の映画と思ってはいけません。

 子供が主人公とはいえ、かなりシリアスな戦争映画ですよ、これは。

 

クリックでAmazonページへ。

あらすじ

 舞台は主に中国の上海。外国商社を経営する両親と、富裕な暮らしを送るジェイミー少年。

 彼らは上海にあるイギリス租界(外国人居留地)に暮らしている。

 ジェイミーは零戦のパイロットに憧れていて、日本軍に入隊してもいいと考えるほどだった。

 しかし、1941年、日本軍が突如軍事行動を起こし、家族は離れ離れに。

 サバイバル技術を持たない温室育ちのジェイミーが、1945年の戦争終結までを生き抜いていく……。

 

太陽の帝国 ゼロ戦

日本のゼロ戦にあこがれる英国少年 『太陽の帝国』より

なぜ家政婦は少年をビンタしたの?

両親とはぐれ、ひとりぼっちになったジェイミーは家に戻ります。

すると、かつての自宅はすでに日本軍に接収されており、両親の姿もない。

しかも、つい先日までは家政婦として雇っていた中国人の女からビンタをくらいます。

戦争が始まったせいで、主人と家政婦という主従関係が消滅したからだね

 

それにしても少年をビンタするなんて……。ジェイミー少年は、家政婦をよほどコキ使ってたんでしょうね。

そこに罪悪感がないのが、上流階級の少年の恐ろしいところです。 

アメリカ人に新しい名前をもらう

英国人らしい高級な服を着たジェイミーが、町をうろうろしてたらやばいに決まってますよね。

案の定、すぐに中国人青年に靴を強奪されます。

そこへアメリカ人のベイシーが現れ、少年の窮地を救います。

 

以降、彼らは行動を共にします。

特にこのベイシーは、戦争の惨禍を生き残るすべを少年に教えこんでいきます。

 ベイシーは徹底した実用主義者(プラグマティスト)で、感情に動かされることがあまりないのです。戦争を生き残るにはうってつけの性格です。

 

そして、ジェイミー少年は「ジミー」という新しい名前をプレゼントされます。

温室で育ってきたジェイミーという今までの名前を捨てることになるんだね

 にわかアメリカ人になった英国少年

しかし、彼らは日本軍に捕まって強制収容所に送られます。

 

収容所内はアメリカ人棟とイギリス人棟に分かれていて、それぞれのグループが形成されています。

少年はベイシーをはじめとするアメリカ人グループに急接近していき、アメリカの文化を吸収します。

 

少年はイギリス人という国籍を忘れて、色んなものにあこがれを持ちます。

 
 日本の零戦もそうだし、アメリカ人のタフネスさも尊敬します。

 この辺は、第二次世界大戦中の大英帝国のパワーの失墜を暗示しているのかも……。

 

スピルバーグ 太陽の帝国

にわかアメリカ人に変身した少年 『太陽の帝国より』

ちなみに、少年役を演じたクリスチャン・ベールはその後、『アメリカン・サイコ』という映画でサイコパスの男を演じています。

クリックでAmazonページへ。

彼に何があったんでしょうか。

原爆の白い光を目撃する

 そこへ、アメリカ軍の戦闘機が爆撃を仕掛け、日本軍を撤退させます。

 少年を含む捕虜たちは、別の場所へ移動させられます。

 その道中で、少年は「神様が写真を撮ったような白い光」がはるか遠くの空で光るのを目撃します。

あの光はとっても神秘的だったなあ

 

 実際に上海にまで原爆の光が届いたという歴史的事実があるのかは分からないけれど、この映画の中核をなす重要シーン。

 日本人として、あなたはこのシーンをどう感じるだろう?

両親との再会

 第二次大戦は終結。

 少年は4年ぶりに両親と再会する。このシーンも単なるハッピーエンドという感じではないんですよね。

少年は両親に会っても無表情を崩さなかったよね

 

 少年はすでに少年ではなくなっていた。少年の顔つきは大人のそれになっていた。

 ラストシーンで、少年が昔あそんだおもちゃの詰まったカバンが川に浮かんでいるのは、少年との決別を示す象徴なのです。

 

 

あれ?『千と千尋の神隠し』に似てね?

 そう。実は似てるんです。あの超有名映画と。

●『太陽の帝国』

少年が両親と別れ、戦争という試練の場へ投げ出される

アメリカ人から新しい名前をもらう

試練を経て、金持ちのおぼっちゃまが大人へと成長

戦争終結。日常の世界に戻り、両親と再会する(大人になった表情で再会)

 

●『千と千尋の神隠し』

トンネルを抜けたら不思議の町で、両親が豚に変身させられる(両親との別れ)

ゆばーばから新しい名前をもらう

異世界での試練を経て、冷めた少女が感情豊かに成長

日常世界に戻り、両親と再会する(大人になった表情で再会)

 

どうです? こう書くと似てる気がしませんか?

『太陽の帝国』の公開が1987年。

『千と千尋の神隠し』公開が2001年。

 

もちろん、『千と千尋の神隠し』が『太陽の帝国』に影響を受けたなんてトンデモ説を唱えるつもりはありませんよ!

でもそうも思いたくなるくらい似ているような気が……

まとめ

けれど、いくら『千と千尋の神隠し』に似ているとは言っても、やはりこの映画は別物です。

『太陽の帝国』は戦争という生々しい現実を活写した映画であって『千と千尋の神隠し』のようなファンタジーとはやはり、趣を異にしているといっていいでしょう。

一人の少年が、戦争という通過儀礼に揉まれてどのように変貌していくのか。

しかし、非日常的世界を通じた子供の成長を描いた作品という点では、両作は共通しています。

 

零戦に憧れる英国少年の成長物語

冷めた日本人少女の成長物語

 

 

あなたはどちらを観たいですか?