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30分以内にうんこしないとカフェバイトをクビになる状況に追いこまれた

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こんなにうんこを急かされたのは初めての経験だった。

僕はほとんど便秘になった経験がないので、いつもならうんこの一つや二つくらい、ブリッと出せるのだが、今回はそうはいかなかった。

あっ、待ってほしい。帰らないでほしい。事情を説明させてほしい。

実は、僕はカフェでアルバイトをしているのだが、その店のルールでは「従業員は月に1回、必ず検便を提出しないといけない」のだ。


忘れてしまうと、店に多大な迷惑がかかる上に、最悪の場合、勤務そのものができなくなる。
(ちなみに僕がバイトをしているカフェはイオンモールの中にあるので、従業員の衛生管理にはめっぽう厳しいのだ)

僕はそれをすっかり忘れていた。

そのささいなド忘れが、今回のうんこ騒動を招いたのである。

1.いつものバイトの日だった

その日は、いつも通りのバイトの日だった。

21時で店は閉店なのだが、店を閉めた後にもいろいろ作業があって、最終的に仕事がすべてかたづくのは22時くらいになる。



基本的に2人体制なので、仕事はすべて僕ともう一人でやることになる。

まあ、もう仕事は慣れているので、いつも通りすんなり仕事を終わらせた。

仕事がかたづいたのは22時20分くらい。
いつもより少し遅めだったのは、僕がレジ閉めに手間取ったせいだ。

2.心の声が「気づけ」と警告する

仕事が終わり、もう一人のバイトさんと別れて、家に帰ろうとした。

そんな僕の目の前を、一人の男がすばやく横切った。

その男は血相を変えて、トイレに駆けこんでいった。

(下痢でも起こしたのか…)内心でクスクス笑ってバカにしながら、僕は通り過ぎようとした。

だが、得体の知れない無意識からの警告が、腹の底からわきあがってくる。



(なにか忘れているぞ……思い出せ……)僕の中の僕がささやく。



僕の頭の中で、自動的に連想ゲームがはじまった。



「トイレに駆けこむ男」➡︎「下痢」➡︎「大便」➡︎「うんこ」➡︎「検便」





──これは一大事だ!

月一回の検便をすっかり失念していたことに、ようやく気づいた。

しかも、今日が検便の最終締切日ではないか!

イオンモールは23時で閉まってしまう。

そのチャンスを逃がすと、検便を提出する機会が永遠に失われ、店にたいへんな迷惑がかかってしまう……。

「もう取り返しがつかないという黒い光が、私の未来を貫いて、一瞬間に私の前に横たわる全生涯をものすごく照らしました。そうして私はがたがたふるえ出したのです」

僕は、先生がKの死体を見つけたときのような気持ちになった。(知らない人は夏目漱石の『こころ』を読んでみてください)



3.タイムリミットは30分

腕時計を確認すると、22時30分。

検便を提出できるのは、23時まで。

なんとか30分以内にうんこをひねり出すしかない。

(大丈夫、俺はいつも快便だ。特大のブツをひねり出してやる……)

しかし、ここでまずいことに気づく。

その日のバイトのシフトは、15時〜22時だったのだが、その間、水以外はなにも口にしていない。

昼飯はパンをいくつか食べただけである。しかも大便は、14時半くらいに一度すませてしまっている。



僕にはまったく便意がなかった。

便意がないことに絶望したのは初めてだ。

(いや、トイレに座りさえすれば、便意がこみ上げてくるかもしれないぞ……)

僕は荒々しくトイレの個室内に入り、便座にケツをおろした。

(出ない……)

まったく、出る気配がない。

仕方ないので、一度トイレを出て、特売のおにぎりやパンを買ってきた。

また個室内に戻り、鬼の勢いでそれを食べる。

タイムリミットは10分をきっていた。

僕は十字を切って、イエス・キリストに祈りをささげ始めた。

「イエスよ……。あなたもゴルゴダの丘で十字架に吊るされていたのだから、大便ができない苦しみがわかるはず……お願いですから僕に大便をさせてください……」

悲痛な祈りが、トイレの個室内に響く。


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もはやこれまでか……と諦めかけたそのとき。

ブツが出そうな気配がわずかにあった。

この機を逃さぬとばかりに、僕はそのわずかな便意を追いかけた。

僕は思いあまって、念仏を唱えはじめた。

「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏……」

もはやなんの宗教を信じているのか、自分でも分からなくなった。

だが、神は我を救いたもうた。





ブリッ。
──出たぞ、ブツが。

僕は狂喜乱舞の勢いで喜んだ。

やはり、神に祈れば、不可能はないのだ。

僕は急いでブツを容器の中に回収し、イオンモールの指定場所に提出した。

めでたし、めでたしだ。